デスクの向きで人生を好転させることができる!


私は、実の父と祖父、それぞれが抱えた借金のため、住む家を二度失いました。

 最初は私が四歳、弟が二歳の時。

 今から考えれば、生い立ちが特殊だったためか、父はまるで世間に対して「見返してやりたい」と言わんばかりに野心が大きく、事業を興そうとしたりもしました。

 また、見栄からか金遣いも荒く、収入よりも支出の方がどんどん増え、借金が重なっていったのです。

 父が三二歳の時でした。

 やがて借金取りが家に来るようになり、母はその恐怖とストレスから、ノイローゼを患うようになりました。

 そして最後には父は行方をくらまし、母に対して離婚届一枚のみを送りつけた後、完全に消息を絶ったのです。

 途方に暮れた母は幼い私達兄弟を連れて、関西から、実家のある山陰へ戻りました。

 そこからの私達親子三人の生活はとても辛いものでしたが、母は必死に夜勤などもして、人並みの暮らしをさせてくれたのです。

 しかし私が十七歳の冬、今度は実の祖父(母の父)が、借金の保証人となったことで当時住んでいた家が取られ、二度目の一家離散となりました

 別に不幸自慢がしたいわけではありません。

 ただ、少年期にこうした出来事が二度もあったことは、私が人生やお金というものに対して暗さや怖さを感じることとなる、大きな要因となったのです

 また、現代社会ではまったく珍しくなくなりましたが、私の少年時代では片親というのがそれほど多くなく(「シングルマザー」などというオシャレな言葉もなかった頃です)、父親参観日などの学校行事や、友達との会話において引け目を感じることも多くありました。

 このような生い立ちから、私は「両親」「家族」「お金」「人生」「幸せ」というものに対して曲がった捉え方をするようになり、結果として少年らしい性格も歪めてしまったように思います。  

 そうすると、青年から社会人となっても、人間関係もうまくいくはずがありません。

 毎日がストレスの連続でした。

 悪循環は勢いを増し、私はいつの間にか自分で「病気」や「不幸」を呼ぶ体質になっていったのです。

 体は慢性的に重く、いつも全身がこっていて眠くけだるい。

 二十六歳の時には胃・十二指腸潰瘍や尿道狭窄を患い、精神的にも病んでいきました。

 あのままいけば、ストレスからくる暴力事件で犯罪者となるか、もしくは自殺してしまうかといった最悪の末路しかなかったでしょう。

 しかし、そうはならなかったのです。

 それはふとしたきっかけでした。

 人間関係や体の不調に悩みながら毎日を過ごしていた私は、なんとかして人並みの平穏や幸せを手に入れたいという気持ちが、人の何倍も強く心にありました。

 そのためには今の自分を根本的に変えなければいけない。

 そして、環境も大きな要因だと考えるに至ったのです。

 当時の私の部屋はといえば、モノが散乱して汚い部屋、というわけではなかったのですが、機能的でハイセンスというにはほど遠い状態でした。

 多くの若者が当てはまると思いますが、不要なモノが捨てられることなく部屋のかなりの割合を占め、観ようと思ってつけたわけではないテレビをダラダラと観たり、何度も読んだようなマンガを読み返したり、挙げ句そのまま朝までうたた寝したりと、膨大な時間を浪費する毎日だったのです。

 そこで考えました。

 このまま毎日、非生産的で無意味、そして他人や起こる出来事に翻弄される毎日を過ごしていても人生が良くなるはずがない

 なんとかして、世の成功者のようにビジョンと使命をもって人生を闊達と生き抜き、他の人に良い影響を与えるような人になりたい。

 成功、とまではいかなくても、せめて自分だけの一度きりの人生、他人の支配やコントロールを受けることなく自分の意志でプロデュースしていきたい

 そして、社長室や、成功者が持つカッコいい書斎にあこがれ、まずは形だけでもと思い、机の向きを変えたのです。

 そうです。

 雑誌やドラマに出てくる社長室のように、入り口から一番遠い窓を背にして、入り口の方を向くように机を置いたのです。

 こうすると、それまで壁向きに置いていた机が、かなり部屋の中央の空いていたスペースを多く占めるようになり、部屋が狭く感じました。

 しかし、本当はそうではなかったのです。

 これだと、目の前の空間が広がり、逆に有効面積は広くなったのです。

 そして、部屋を広い視点から見ることができるようになり、これまでのダラけた生活を客観的に見ることによって、部屋と人生をさらに大きく変えたいという意志へとつながりました。

 この意識をもってあらためて部屋に置いてあるモノを見渡すと、自分の人生にとって本当に大切なモノ、不要なモノが、はっきりと分かるようになりました。

 まるで企業の社長が、社長室に運ばれてきた様々な書類に対してひとつずつ熟考し、決裁を下していく作業に似ています。

 いえ、こうして机を入り口へ向けて配置し、所有物や起こる出来事に対して迅速な判断を下せるようになると、それはもはや「机」ではなく「デスク」、「部屋」ではなく「オフィス」または「書斎(基地)」と呼べるのです。

 こうなると、生活は加速度的に好転していきました。

 不要なモノを捨てていくことは、人生を重くしていた荷物を降ろすかのように気持ちの良いことだと知り、その過程で、本当に自分が好きなことや人生にとって大切なモノを発掘することができたのです。

 好きなことを、再発見し、その興味深い道を楽しみながら探求心をもって進んでいくことができれば、成功しない人なんていないでしょう。

 私にとってのそれは、『多くの人に良い考えを伝えて喜んでいただき、その過程で自らも学び成長していく』ということだったのです。

 実際、多くの場で講師や司会、座長やシンポジストをさせていただく機会を得るようになりました。

 また個別にもそういった相談を受けるようになり、多数の方に人生を良い方向へ変える気づきをもっていただくことができたのです。

 

 このように人生を激変させ、発見した夢を実現させるに至った最も大きな要因は、つまり「考える」習慣を持つようになったことです。

 現代人は皆、とても高度な知識と技術を持っています。

 しかし、実はかなり多くの人が日常的に真の意味で「考える」ということから離れていっているのです。

 膨大な量の情報が、黙っていても流れてきます。

 そして、実際その情報という大きな波に流され、溺れるように生きているのです。

 時代が少し前であれば、何かについて知りたいと思っても、それを調べる術は現在より格段に少なく、自ら取りにいく姿勢がないと得ることができませんでした。

 食や娯楽と同様、情報や知識に関しても常に飢え、渇いていたのです。

 しかし現代は、食に関しては「飽食」とも言われるように、情報についても飽和状態で、必要以上の量が溢れかえっています。 

 こういった要因が、人間本来の「物事を深く考える」という機能を退化させています。

 このことに気づくことができた私は幸運でした。

 これまでは人生で起きることに対して常に受け身で、ネガティブに捉える傾向にあり、「悩む」「心配する」という姿勢だったのです。

 しかし、こうして何事にも常に「考える」という習慣ができてからは、非常にポジティブな姿勢となりました。

 何かトラブルや悪い出来事が起こっても、悩むのではなくその良い解決法や対処を考える。

 そして、今後起こらないための対策を練っておく。

 その循環が良い結果をもたらすということを、身をもって経験しました。

 こうした習慣から、先に挙げたような人間関係や心身の不調は全て解消されました。

 むしろ、これまでの人生の中で最も良い状態になったと言っても過言ではありません。

 そして、充実したビジネス。

プライベートでは結婚、理想とした立地でのマイホーム、一男一女を授かったりと、幸せな家庭を持つこともできました。これは、数年前までの状況では想像もできなかったことばかりです。

 もう少し深い話をします。

 こうして環境を変え、考え方が変わることで習慣や人生が良い方へ向かい始めた頃、私は自分の人生における大きなテーマと向き合い始めました。

 「父との再会」です。

 私たち家族を捨て、借金を抱えて失踪した父。

 どう考えても妻や我が子、家庭を捨てて、完全に消息を絶つ理由が分かりませんでした。

 ただ、このまま一生、実の父と逢わずに私や弟の人生を終わらせるのは良くない。

 いえ、私や、弟の子ども達、そして何より父自身にとっても良いはずがないと強く感じるようになったのです。

 父の失踪からちょうど30年。

 別々の人生を歩くことになった私達親子の、魂レベルでの会話をしなければいけない。

 さらには、一度も訪れたことのない父方の先祖の墓前で、私達兄弟とその子達がこの世に生まれることのできた感謝の念を伝えたい。

 この実現に向け、デスクで考え、日々実行に移したのです。

 詳細についてはまた後日書かせていただきますが、私をこの世に生み出してくれた父とその先祖という、私自身のルーツへの心の旅とでも言える体験をしたと思っています。

 そしてその体験を経てからの私には、少年期・青年期とは違って、出逢う人や出来事すべてが有意義で素晴らしいものに変わりました。

 いえ、もうお分かりでしょう。

 変わったのは周囲ではなく、それを正しい形で受け取るための、私の心のありようが変わったのです。

 ここに私が書くことは、巨万の富を得たり、上場するような会社の社長になったりという、「大成功」を目指す方には向かないでしょう。

 ただし、これまで人並み以下の生活や、苦しい人生しか味わっていない方にとっては、救いの書となります。

 また、日々他人や企業の奴隷のような生活をクタクタになりながらガマンして過ごしている方が、自分の好きなモノを見つけて幸せに成功していくためには、大いなる「指針」となるはずです。

 ひとつ言わせていただくと、仕事やビジネスで「大成功」してしまうと、富や名声、他人からの賞賛は得ることができますが、代わりに、自分の好きなことをする時間や、家族、友人、パートナーなどの大切な人と過ごす時間を失う傾向にあります。

 もちろんそうでない人も大勢おられると思いますが、大きすぎる成功は、人生のバランスと自由を奪うのです。

 それよりは、自分の好きなことを人生の中心におき、家族や友人、パートナーとの楽しい時間を大切にしながら、生き生きと毎日を過ごす方が良いとは思いませんか? 

 そのための方法を、体系立ててステップアップ式にお伝えします。

 あなたも、デスクとともに人生の向きを良い方へ変えませんか?

 そして、その過程で嫌いなことや無意義なことを捨て去り、自分にとって「大好きなこと」や「夢中になれること」を人生の中心に置くことによって、幸せな成功を目指しましょう。

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